激変緩和措置とは?今後の電気料金はどうなるの?

激変緩和措置とは?電気代の変化や終了後の対策

「激変緩和措置って何?」
「終了後に電気代は上がる?」
「終わった後にできる対策は?」

激変緩和措置とは何か、措置が終了したら電気代は高くなるのか、措置終了後の対策はどうしたらいいのかなど、疑問や不安を感じる方は多いですよね。

電力の激変緩和措置は、政府の定めた単価で電気代を値引きし、エネルギー価格高騰による電気代の急激な値上がりを抑制する一時的な施策です。

措置期間が終われば電気料金は上がるため、終了後の対策もイメージしておきましょう。

本記事では、激変緩和措置の詳細や措置終了後の電気代について解説します。

また、毎年単価が変動する再エネ賦課金や、激変緩和措置終了後の対策についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

激変緩和措置とは

激変緩和措置とは?

激変緩和措置とは、制度改正によって消費者や企業への急激な変化を予防する目的で、自己負担の割合を段階的に上げ円滑に新たな制度へ移行するための施策です。

電力業界における激変緩和措置では、電気料金の急激な値上がりを抑えるため、各家庭や企業の電気使用量に応じて、国の定めた割引額をもとに一定期間のみ電気料金が値引きされます。

措置期間中に国が電気料金の一部を補助しつつ、自己負担の割合を段階的に上げていくことで、新しい料金体系へスムーズに移行するのが狙いです。

私たち消費者が特別な手続きをしなくても、電力会社の請求額から自動的に値引きされるから大丈夫。

もともと国から電力会社へ値引き分の原資を提供しているから、私たちは手続きをしなくていいのよ。

世界情勢の変化により2023年にエネルギー価格の高騰が見られた影響で、2024年1月から「電気・ガス価格変動激変緩和対策」がスタートしました。

激変緩和措置の実施期間

電力における激変緩和措置の実施期間は、2024年2月から2024年6月請求分までで、実質2024年1月から2024年5月の電気使用分が適応されています。

そんななか、酷暑による健康被害を防ぐため、政府は2024年6月末に「酷暑乗り切り緊急支援」として2024年8月から3か月間、電気代やガス代の値引きを行う旨を発表しています。

実質、激変緩和措置の再開といえる方策です。

激変緩和措置は2024年5月をもって終了

激変緩和措置は2024年5月使用分で終了し、値引きがなくなった分、6月使用分から電気代の値上がりが発生します。

そのため、終了後は再び電気代が値上がりし、家計への大きな負担が懸念されます。

激変緩和
措置
実施期間
(2024年)
値引き単価
電気(低圧)
値引き単価
電気(高圧)
2~4月3.5円/kWh1.8円/kWh
5月1.8円/kWh0.9円/kWh
8~9月4.0円/kWh2.0円/kWh
10月2.5円/kWh1.3円/kWh

2~4月の値引き単価の3.5円が5月は1.8円、8~9月の4円が10月は2.5円みたいに、激変緩和措置終了の1ヶ月前は値引き額が半額程度になってしまうわ。

激変緩和の「段階的に」が値引き額に反映されている形ね。

激変緩和措置の値引き額の算定式

激変緩和措置の値引き額を算定する方法は、「値引き単価×毎月の電気使用量=値引き額」です。

激変緩和
措置
実施期間
(2024年)
値引き単価
電気
(低圧)
値引き料金
(260kWh
の場合)
2~4月3.5円/kWh910円/kWh
5月1.8円/kWh468円/kWh
8~9月4.0円/kWh1,040円/kWh
10月2.5円/kWh650円/kWh

算定式で値引き額を計算してみると、毎月の電気使用量が多い家庭や企業ほど値引き額が大きくなるのがわかります。

逆に言えば、電気使用量の多い家庭や企業ほど、制度終了後に電気代の値上がりが顕著に表れてくるのね。

激変緩和措置の終了がもたらす家計への影響

激変緩和措置の終了がもたらす家計への影響

激変緩和措置や緊急支援が終了した場合、電気料金が再び値上がりし家計の負担が大きくなるのは必至です。

では、実際に激変緩和措置や緊急支援が終了した場合、家計への影響はどれほど大きくなるのか、措置前後の平均電気料金を比較して見ていきます。

世帯措置期間中
平均電気料金
措置終了後
平均電気料金
1人世帯5,181円/月5,827円/月
2人世帯8,694円/月9,670円/月
3人世帯10,089円/月11,228円/月
4人世帯11,378円/月12,664円/月

平成26年度東京都家庭のエネルギー消費動向実態調査 報告書」の戸建て電気使用量、平均月額料金をもとに、措置前後の平均電気料金を一覧にまとめました。

世帯人数が多く電気使用量が増えるほど、措置終了後に電気料金の値上がり幅が大きくなっているのがわかります。

2024年5月からは再エネ賦課金も上昇

2024年5月からは再エネ賦課金も上昇

激変緩和措置の終了だけでなく、2024年5月からは再エネ賦課金も昨年の1.40円/kWhから3.49円/kWhへ単価が引き上げられました。

実施
期間
(2024年)
激変緩和
措置
(値引き
/kWh)
再エネ
賦課金
(追加料金
/kWh)
2~4月-3.5円+1.40円
5月-1.8円+3.49円
8~9月-4.0円+3.49円
10月-2.5円+3.49円

再エネ賦課金の単価が昨年度より2.09円/kWh引き上げとなるため、1人世帯から4人世帯の平均電気使用量で考えると毎月390円から910円は値上がりすると考えられます。

激変緩和措置や緊急支援制度の終了にプラスして再エネ賦課金の上昇は、家計にとって大きな痛手となるでしょう。

再エネ賦課金とは

再エネ賦課金とは「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の略称で、国内で再生エネルギーによる発電を普及するため、電気使用量に応じて消費者すべてに生じる負担金です。

再エネは、地球の環境保護やエネルギー自給率アップのために重要な発電方法ですが、火力発電や原子力発電よりコストがかかります。

そうしたコストを全国民で負担し、日本国内の再エネ普及を加速させようというのが再エネ賦課金の目的です。

再エネ賦課金の単価は毎年政府によって定められ、2012年からスタートして以降、年々上昇傾向にあります。

激変緩和措置終了の対策は節電・省エネ

激変緩和措置や緊急支援が終了した場合、電気代の値上がりを抑えるためにまず有効なのは節電や省エネ対策です。

制度終了後に電気代の急激な値上がりを防ぐためにも、日々の暮らしで電気を無駄にしていないか改めて確認していかなければいけないな。

例えば、エアコンの設定温度や家電の省エネ性能の有無など、節電や省エネ対策を見直せる部分は多々あります。

では、節電や省エネ対策について、具体的にどこを確認し見直したらいいのか、詳しく解説していきます。

エアコンの設定温度を見直す

エアコンの設定温度を見直す

私たちの暮らしで必須家電のエアコンですが、設定を見直すだけで電気料金をかなり安くできます。

エアコンの設定温度を1℃変えると、冷房の場合は約13%、暖房の場合は約10%の消費電力が削減できるといわれています。

また、設定温度の見直しを行うにあたって、少しの工夫をするだけでエアコンの稼働効率もアップしより効果的です。

  • サーキュレーターを併用する
  • フィルターや室外機周りを定期的に清掃する
  • カーテンやすだれで夏場の日差しや冬場の冷気を遮断する

エアコンの稼働効率を上げ設定温度を見直す対策は、日々の節電や省エネ、そして電気代の節約につながる第一歩です。

暖房器具の余熱を利用する

暖房器具の余熱を利用する

電気消費量の多い家電である暖房器具を有効活用するには、余熱利用がポイントです。

ストーブやエアコンなどの暖房器具は、消した後でもしばらくは室内に熱が残って暖かい状態になっています。

例えば、家族が時間差で出勤する場合、最後に家を出る人ではなく、余熱を見越して最後から2、3番目に家を出る人が早めに暖房器具を消すといった方法で節電ができるな。

また、暖房効率をよくするために、いくつかの対策をプラスするのも有効です。

  • 厚手のカーテンに変える
  • 冷気の入る窓側に暖房器具を置いて、サーキュレーターを使う
  • 部屋全体を温めるエアコンと、部分的に温めるカーペットや電気毛布を併用する

制度終了後、電気代の急激な値上がりを防ぐために、暖房器具の余熱を上手く活用して節電をしていきましょう。

適切なアンペア数に変更する

適切なアンペア数に変更する

電気代の節約に直結する対策は、アンペア数の変更です。

電気の基本料金となるアンペア数は数値が大きいほど料金が高いため、1度に使用する家電が少ない割に契約アンペア数が大きいと損をしてしまいます。

比較
内容
30Aの契約40Aの契約
エアコン6.6A6.6A
冷蔵庫2.5A2.5A
ドライヤー12A12A
合計
(余力)
21.1A
(8.9A余力あり)
21.1A
(18.9A余力あり)

必要アンペア数の多い家電を同時に使用しても合計で21アンペア程度だから、契約アンペアは40から30アンペアに下げても大丈夫だね。

ただし、契約アンペア数を変更したあと、原則1年間は再度の変更ができないケースが多いため、極端に契約アンペア数を下げてしまわないよう注意が必要です。

比較
内容
20Aの契約
(ドライヤー使用なし)
20Aの契約
(ドライヤー使用あり)
エアコン6.6A6.6A
冷蔵庫2.5A2.5A
ドライヤー12A
合計
(余力)
9.1A
(10.9A余力あり)
21.1A
(1.1A余力なし)

例えば、契約アンペア数を40から20Aのように極端に下げてしまうと、エアコンを常時使用する時期などドライヤーを使用した際にブレイカーが落ちてしまいます。

そうした状況を避けるためにも、同時に使用する電化製品をきちんと確認したうえで、自分に合った適正なアンペア数への変更を検討していきましょう。

照明をLED電球に変える

照明をLED電球に変える

照明をLED電球に変えることで、節電、省エネ対策になります。

なぜなら、LEDは白熱電球より節電効果が高いうえ、電気寿命が長く交換頻度は低くなるからです。

具体的には、LED電球は白熱電球の約20%の消費電力で、約30~40倍ほどの長寿命とされているよ。

ただし、LEDは白熱電球より価格が高いため、まとめて変えてしまうと負担額も増大してしまいます。

そのため、毎月一部屋づつLED電球に変えていくなど、徐々にLED化を進めると良いでしょう。

古い家電を買い替える

古い家電を買い替える

思い切って古い家電を買い替えると、電気代を安くできます。

新しい家電は年々省エネ性能がアップしており、中には10年前の家電と比べて消費電力量が半分以下になるものもあります。

僕たちの生活に欠かせないエアコンだけど、経年劣化のせいで年々消費電力量が増えていくものもあるんだって。

10年以上前の古いエアコンなら、買い替えをした方が総合的にお得になるよ。

最近ではかなり性能のいい省エネ家電が販売されているため、電気代節約のためにぜひ1度古い家電の買い替えを検討してみましょう。

消費電力の大きい家電の使い方を見直す

消費電力の大きい家電の使い方を見直す

普段あまり意識しないかもしれませんが、消費電力の大きい家電の使い方を少し見直すだけでも節電対策につながります。

消費電力の大きい家電はどのように節電をすればいいのか、詳しく見ていきましょう。

炊飯器で長時間の保温をしない

炊飯器でご飯を炊き1時間保温した場合、炊飯器の機種にもよりますが約0.6円の電気代がかかります。

炊飯後の保温は、時間が経過するほど電気代がかさむのに加え、ご飯の味も落ちてしまいます。

電気代節約だけでなくご飯を美味しく食べるためにも、炊飯後の余ったご飯は冷凍して保温スイッチは早めに切るようにしよう。

冷蔵庫は内部に余裕を持たせる

冷蔵庫内に物を入れすぎると、冷気が循環しにくくなり通常より電気使用量が上がります。

経済産業省によると、冷蔵庫内の物を半分にすると年間で43.84kWhの省エネ、1,360円の節約になるとされています。

冷蔵庫内を整理するときは、冷蔵庫内の物を半分から7割以下にするよう注意しないといけないな。

冷蔵庫内をすっきりさせて、少しでも電気代の節約につなげていこう。

冷蔵庫は壁から離して設置する

冷蔵庫周囲に隙間がないと放熱できず、余計に電力を消費してしまい電気代がかさんでしまいます。

経済産業省のデータによると、冷蔵庫上と両側が壁に接している場合と片側のみが壁に接している場合を比較したところ、年間で45.08kWhの省エネ、約1,400円の電気代節約が可能と出ています。

電気代節約のためにも、冷蔵庫の上には物を置かず、壁から離して設置するよう意識しましょう。

トイレの温水洗浄便座のふたはこまめに閉める

温水洗浄便座のふたは開けたままにしておくと、便座が冷えやすくなり温めるために多くの電力を消費してしまいます。

経済産業省のデータでは、便座のふたを開けたままにした場合に比べて、使わないときは便座のふたを閉めていた場合の年間電気消費量は34.90kWhの差があり、約1,080円の電気代節約になるとされています。

トイレを使用しないときは必ず便座のふたを閉めるのを習慣化して、電気代を節約していこう。

節電タップを使用する

節電タップを使用すると、コンセントを抜き差しせず、タップのスイッチをオフにするだけで待機電力をカットできます。

待機電力は、使用していない状態でも電化製品をコンセントに差しているだけで、少しずつかかっています。

▼待機電力の多い家電一覧

  • デスクトップパソコン
  • エアコン
  • DVDレコーダー
  • ゲーム機
  • 一体型オーディオ

待機電力の多い家電を中心に節電タップを活用し、使用後は必ず節電タップのスイッチをオフにするよう徹底しましょう。

新電力への切り替えもおすすめ

新電力への切り替えもおすすめ

激変緩和措置終了後の電気代を考えると、電力会社の切り替えも効果的な対策の1つです。

電力会社の中には、電気使用者の生活スタイルに合わせた料金プランを用意しているところがあります。

プラン
内容
詳細
時間帯別
プラン
電気を使用する時間帯(日中帯、夜間帯など)によって料金が安くなる
仕事などで日中もしくは夜間に家にいない人向けの料金プラン
市場連動型
プラン
市場価格の変動に応じて、電気料金の単価が変動するため深夜帯に電気代が安くなることが多い
一人暮らしなど、市場価格に応じて生活スタイルを変えられる人向けの料金プラン

新しい電力会社を選ぶ際、自分の生活スタイルに合った電気料金プランのある会社を選べば、電気代が大幅に安くなる可能性もあります。

ただし、自分の生活スタイルと料金プランが合っていなければ、電力会社を切り替えても逆に電気代が高くなってしまう場合もあるので注意が必要です。

激変緩和措置でよくある質問

5人家族の電気代でよくある質問

激変緩和措置について、よくある質問にお答えします。

激変緩和措置とは?
激変緩和措置とは、制度改正による国民への急激な負担を避ける目的で、段階的に自己負担の割合を引き上げ円滑に新たな制度へ移行していくための施策です。
電力業界における激変緩和措置は、一時的に電気代を値引きすることで自己負担の割合を段階的に引き上げ、消費者を新たな料金体系に適応させるのが狙いです。
2023年世界情勢によるエネルギー価格の高騰が顕著となり、2024年1月から2024年5月まで「電気・ガス価格変動激変緩和対策」が実施されました。
>> 激変緩和措置を詳しく見る
激変緩和措置終了が家計にもたらす影響は?
激変緩和措置終了後は、電気料金が値上がりし家計への負担は大きくなります。
特に電気使用量の多いファミリー世帯ほど、制度終了後に電気代が大きく値上がりする可能性があります。
>> 激変緩和措置終了が家計にもたらす影響を詳しく見る
再エネ賦課金も値上がりするの?
再エネ賦課金は年度毎に単価が変わりますが、2023年度に比べ2024年度は2.09円/kWh値上がりしました。
世帯毎の平均で、毎月390円から910円は値上がりすると考えられます。
>> 再エネ賦課金を詳しく見る

まとめ

最後に激変緩和措置について、おさらいします。

  • 電力の激変緩和措置は、一定期間電気代の値引きを行い、消費者が電気代の急激な高騰に適応できるよう実施された制度
  • 激変緩和措置終了後は、電気使用量の多い世帯ほど電気代の値上がり幅が大きくなる
  • 2024年5月から再エネ賦課金も値上がりし家計の負担は増大
  • 激変緩和措置終了後の対策は、節電・省エネを意識しつつ、新電力への切り替えも検討

激変緩和措置が終了し、2024年7月の請求から電気代が高くなります。

また、2024年度に入り再エネ賦課金の見直しもあり、電気代の総額が大きく跳ね上がると考えられます。

電気は私たちの暮らしからは切り離せず、生活していくうえで電気代の支払いは必須です。

電気代の高騰はエネルギー資源の問題だから、根本的な解決策はないのよね。

どうにか電気代を抑えるには、節電、省エネ、電力会社の切り替えを考えるしかないわ。

今回の激変緩和措置終了を機に、電気使用量や電気の使用時間帯を見直し、自分に合った電力会社への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。