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「市場価格調整額とは何?」
「市場価格調整額で電気代は値上がりする?」
「市場価格調整額の算定方法は?」
ニュースや電気会社からのお知らせで見かけるようになった「市場価格調整額」ですが、何のことか気になっている人も多いのではないでしょうか。
市場価格調整額で電気代が大きく変わるのであれば、その理由や仕組みを詳しく知っておきたいですよね。
市場価格調整額とは、電力市場の値動きを電気料金にいち早く反映するために組み込まれた料金のことです。
市場価格の上がり下がりに合わせて、電気料金を調整するために設けられました。
昨今の電気代値上がりの原因のひとつです。
本記事では市場価格調整額とは何か、また適用時期や金額の算定方法について詳しく解説します。
市場価格調整額を導入する理由についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
市場価格調整額とは
市場価格調整額とは、電力市場の値動きを電気料金にいち早く反映するために組み込まれた料金のことです。
大手電力会社は日本卸電力取引所で電力を購入しています。
電力の需要は時間帯によって変わるので、電力の価値も30分ごとに見直されます。
この価格変動を電気料金に反映し、適切な価格で電力を供給できるようにするための費用が市場価格調整額です。
本記事執筆時点において、日本の主要電力会社9社すべてが市場価格調整額に基づく電気料金の調整制度を導入しています。
ただし、基準となる市場価格は電力会社によって異なります。
たとえば、東北電力は2022年1月~12月のスポット市場価格をもとに決定しているので基準市場価格は21円39銭ですが、北海道電力は3ヶ月分の平均市場価格を基にしているので基準市場価格は12円24銭になるわ。
市場価格調整制度とは
市場価格調整制度とは、卸電力取引市場における市場価格の変動を迅速に電気料金に反映させるためのしくみです。
平均市場価格と基準市場価格の差分を市場価格調整額として算出し、その金額を電気料金に反映させます。
平均市場価格が基準市場価格を上回る場合は電気料金のプラス調整をし、下回る場合はマイナス調整をします。
仮に平均市場価格が高くなっているのに、電気料金は据え置きだと、電力会社は赤字になってしまうね。
平均市場価格はスポット市場の実績から導かれる価格であり、市場の実態を表したものです。
市場価格が上がっている時間帯・時期は電力需要が高く、市場価格が下がっている時間帯・時期は電力需要が低いことが分かります。
発電事業者の経営環境を安定させるために、電力の市場価値の上昇に応じて変動した平均市場価格を、迅速に電気料金に反映させる必要があります。
日本卸電力取引所(JEPX)
日本卸電力取引所は2016年の電力自由化に伴い、2003年に設立された日本で唯一の卸電力市場です。
小売電気事業者が卸電力取引所で電力を買うことで、発電設備を持たない電気事業者でも電気の販売ができるようになったわ。
9つの電力エリアごとに市場価格が決められ、その価格で取引されています。
日本卸電力取引所では、タイミングや種類ごとに主に5つの市場が開催されています。
主な取引市場 | 取引内容 |
---|---|
一日前市場 (スポット市場) | 受取日の一日前に行なわれる電力取引 |
当日市場 (時間前市場) | 実際の電力使用時間の1時間前まで可能な取引 |
先渡市場 | 3日から3年先の電力取引 |
ベースロード市場 | 水力や地熱発電などベースロード電力の取引 |
非化石価値取引市場 | 再生可能エネルギーなどの非化石証書の取引 |
なお、日本卸電力取引所で取引をするためには、取引会員にならなければなりません。
スポット市場(スポット市場価格)
スポット市場とは、卸電力取引所が開催している電力取引市場のひとつで、前日までに入札する取引です。
そのため、「一日前市場」と呼ばれることもあります。
1日を30分ごとに分割して、48コマの商品として販売されるわ。
裁定取引単価は1コマあたり50kWhよ。
約定価格や約定量は「ブラインド・シングルプライスオークション方式」で決定します。
約定価格が決まっているため、それ以外での価格での取引はできません。
平均市場価格と基準市場価格
平均市場価格は卸電力取引所で決まる市場価格の一定期間の平均値をもとに決まるもので、毎月変動します。
この市場価格の過去の数値を参考にして、各電力会社で決められているのが「基準市場価格」です。
この基準市場価格を市場価格が上回った場合は電気料金が上がり、下回った場合はマイナスされるしくみになっているのよ。
市場価格調整額の適用時期
電気代に反映されるタイミングは電力会社によって異なります。
電力会社 | 適用時期 |
---|---|
東京電力EP | 検針日が1日の場合:当月分 検針日が1日以外の場合:翌月分 |
中部電力パワーグリッド | 翌月分 |
九州電力 | 2ヶ月後 (例:1月21日~2月20日の実績を4月分に反映) |
ストエネ | 翌月分 |
Looop | 2ヶ月後 |
もっとも早い電力会社では当月分から市場価格調整額が電気料金に反映されますが、翌月~2ヶ月後の電気料金に反映されるところがほとんどです。
電力会社からのお知らせに記載されている場合も多いですが、不明な場合は各電力会社に問い合わせてみましょう。
市場価格調整額の算定方法
「市場価格調整額」=(「平均市場価格」-「基準市場価格」)×「調整係数」
基準市場価格は各電力会社で決められており、平均市場価格との差分に調整係数を乗じて算定されます。
市場価格調整額は月ごとに設定され、電力会社によって単価が異なります。
算出した市場価格調整額を基に、電気料金が決定します。
「電気料金」=「基本料金」+(「電力量料金単価」×「使用電力量」)±[(「燃料調整単価」+「市場価格調整額」)×「使用電力量」]+「再エネ賦課金」
なお、市場価格調整額と同じく、燃料調整単価も月ごとに設定しなおされます。
市場価格調整額を導入する理由
市場価格調整額は経営圧迫を防ぐ目的で、市場価格の変動を迅速に電気料金に反映するシステムとして導入されました。
需給のバランスが崩れると、市場価格は高騰し、事業者の経営が圧迫されます。
2024年に入ってからの月平均のスポット価格は6~12円程度でしたが、2022年は25円程度と非常に高騰していました。
実際に2022年には新電力系の事業者が多数倒産、撤退に追い込まれています。電力卸売市場の価格高騰やエネルギー不足が原因です。
このような事態を防ぐために導入されたのが「市場価格調整制度」です。
市場価格調整額を導入し、電気料金に調整することで、消費者から適切な電気料金が支払われます。
それにより、電力の安定供給が実現しましたが、電気料金にダイレクトに反映されるので、消費者にとっては負担感が高まりました。
市場価格調整額に関するよくある質問
市場価格調整額のよくある質問と回答をまとめました。
- 市場価格調整額とは何?
- 市場価格調整額とは電力市場の値動きを電気料金にいち早く反映するために組み込まれた料金です。
事業者の経営圧迫を防ぐ目的で導入されました。
卸電力取引市場における市場価格が高くなると電気料金のプラス調整をし、下がるとマイナス調整をします。
>> 市場価格調整額を詳しく見る
- 市場価格調整額の算定方法は?
- 市場価格調整額は各電力会社で決められた基準市場価格と平均市場価格との差分に、調整係数を乗じて算定されます。
「市場価格調整額」=(「平均市場価格」-「基準市場価格」)×「調整係数」
>> 市場価格調整額の算定方法を詳しく見る
- 市場価格調整額はいつから導入された?
- 2023年4月から、一部の電力会社で市場価格調整額が組み込まれました。
本記事執筆時点で、全国の主要電力会社はすべて市場価格調整額を導入しています。
まとめ
最後に、市場価格調整額のおさらいです。
- 市場価格調整額とは電力市場の値動きを電気料金にいち早く反映するために組み込まれた料金のこと
- 各電力会社で設定された基準市場価格と照らし合わせて月ごとに設定される
- 電力会社によって単価や反映されるタイミングが異なる
- 事業者の経営圧迫を防ぐために導入された
日本の電力会社のほとんどは、自社での発電だけでなく、卸電力取引所から電力を購入して販売しています。
ただし、電力の価値はその時々の需要によって異なるので、時間帯によっては電気の価値が高くなり、購入ができなくなると電力の供給が不安定になります。
実際に2022年には多くの新電力会社が倒産に追い込まれました。
事業者の経営圧迫を防ぐために、市場価格調整制度が導入されました。
電力会社にとって必要な制度ですが、その分電気料金が値上がりするので、消費者にとっては大きな負担です。
負担を少しでも減らすために、ライフスタイルに合った電力会社や料金プランへの乗り換えを検討しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。